もう会えない君。



あの日、私がときめいたのは皐じゃない。


皐を通り越して奥の方に駅に向かう隼の姿にときめいていた。


隼が駅に向かう理由なんてないはずだった。
だって家は私と同じマンションなのだから。


だけど…
神様は私の初恋を無にした。


隼が駅に向かったのは彼女の為だった。


駅前で隼に手を振る女の子の姿が見えた瞬間、私は終わったと思った。


手を振る女の子はとても可愛くて私とは比べものにならないくらいだった。


その女の子に駆け寄る隼は…笑ってた。
柔らかく微笑みながら二人は楽しそうに会話をしてた。


そして駅の中に消えて行った。


終わった…。
“好き”になった途端に終わった、私の初恋。


悔しくて、
切なくて、
苦しくて。


私は忘れようって思った。
現実を入れ替えようと思った。


相手が居る人を好きになってはいけない。


だから私は…――――自分の本当の気持ちを押し殺した。


好きになったのは皐だと言い聞かせたんだ…。