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重たい校門を開き、誰もいない校庭へ足を進める。立ち止まって校舎の時計を見上げると、針は11時25分をさしていた。
あと10分か・・・。
3時間目が終わるのは、11時35分。少し早く着きすぎたかな、と後悔し、チャイムが鳴るまで待機することにした。

チャイムの音が響き、数名の男子が教室を飛び出す。しばらくして、女子も何人かわらわらと、教室の外へと出てきた。
「あ、彩!!」
教室の、すぐ横にいる私に最初に気付いたのは、となりのクラスの安西未来だった。特に仲がいいわけでもないが、席の位置からして、私が来るのが見えたのだろう。
「おはよ~笑」
私の軽い挨拶に、未来やみんなは「もう4時間目じゃん!」「遅れるなって言ったのに・・・!」と、いつも通りの突っ込みを入れてくれる。
「だって3時間目、社会だったんだもん」
すねたような口調で、理由になっていない言い訳を呟く。
私の遅刻は、最早この学年では常識になってきている。家を出て、公園で時間を潰し、気が向いた時間に学校へ向かう。そんなことが、1年の時から続いていた。今では私がちゃんと登校すると、友達も教師も驚くくらいだ。
「3年で遅刻はまずいぞーっ」「去年軽く3桁超えたもんね・・・」
これも、何度も言われたこと。私だって、3年になってからの遅刻がヤバいことくらい知っている。しかしそれでも、私は大人の言うことを聞く気はまったくなかった。
「明日はちゃんと来るよ」
本来普通であるはずの事を、冗談めかして言う。みんなだって、私が本心からそんな事を言うなんて、思っていないだろう。
そして、
「4時間目、なんだっけ?」
ふとした私の問いに、
「技術。」
とそっけなく返してきたのは、予想外の人物だった。