「…え、お前」
「…っ」
そして、その瞳が驚いたように開かれる
理由なんて簡単だ
私の目から、今にもこぼれ落ちそうな涙に先生はびっくりしてるんだ
「サラ…」
そっと、私の頬を両手で包みゴツンと頭と頭が重なる
「どうした?なんで泣いてるんだよ」
「…っ」
なんで?なんでって…
千尋先生は分からないの?
キスのことも謙先生のことも、今のことだって…
何気ない言葉も、すべて意地悪に聞こえてくる
そう思ったら、さらに胸が痛くて…
「…ぁ」
涙が私の頬を伝う
「サラ…泣くなって、言っただろ?お前に泣かれるの弱いって。それに熱下がったばかりで泣いたらまた熱が上がるだろ」
「…っ」
そんな、こと、言われても…
「サラ」
「…っ」
流れる涙をみた先生が少し困ったような顔をする
「全く、お前は…はぁっ」
先生の手が涙をふき、そっと額に唇が近づいた瞬間―…
ガラッ
「ちーひろ!いる?」
「…っ!」
これで何回目だろうか
ドアが開いた音と謙先生のこえが私たちに聞こえる
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