「気持ち悪いってなによ!千尋のファーストキスはわたしでしょ!」
「…ぇ」
壁越しに聞こえた会話に私の胸が再び高鳴る
千尋先生のファーストキスが…謙先生?
「初めて付き合ったのも、私じゃない!なのに酷いわ」
「…お前な…」
そ、そんな
二人は付き合ってたの?
知らなかった事実に、思わず息もするのを忘れてしまう
千尋先生、そんなこと一言もいってない
ただ、友達でそれ以上でも以下でもないって事だけで…
付き合ってた、なんて
なんで
どうして?
「………っ」
その元カノとお泊まり?
何もないわけ、ないじゃん!
「…っ」
やりきれない思いがあふれて…
爪が手に食い込むけど、痛みなんて感じない
だって
それ以上に胸が痛い―…
「謙、それ…俺以外に言うなよ」
「分かってるわよ!あ、それよりそろそろ時間だから行きましょ」
「…あぁ」
そう言い近づいてくる足跡
「…あっ」
や、やばい
今見つかったら…
そう思う一心で、私は急いで階段をかけ登ると何事もなかったように部屋から出てくる先生が見えた
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