「杏平ー!」

階下から母さんの怒鳴り声が聞こえる。
だめだ、目が開かない。
てことで今日も二度寝かな。
もう一度寝に入る俺。

が、バタバタと階段を
すごい勢いで駆け上ってくる足音に
飛び起きた。
部屋のドアが開けられる前に全てをすまさなければ。

ハンガーに掛かっていたYシャツを
引ったくるようにとって羽織る。
適当に脱ぎ散らかした靴下の中から
まだいけそうな物を発掘してはく。
制服のズボンを穿きつつ、ブレザーを羽織る。

バンっ!

とんでもない力で開けられたドアから
母さんが入ってきた。

「…なに?」

まるで、
ちゃんと起きて準備してたよ?
何か用?
って感じで椅子に座ったまま
何でもないように話しかけた。

「まだ寝てるかと思った。
もう早く行きなさいよ」

いや、今何時か知ってる??
6:30だよ。
やっぱり年寄りの朝は早いんだね。

「…って痛たたた、痛いって。何?」

つねられた頬がひりひりする。

「いや、なんかムカついた」

母さんー!それ人としてどうかと思う。
一瞬、心の声が聞こえちゃったのかと焦ったよ。