ガタッ
扉が音を立てた。
麻依ちゃんがびくりとこっちを向く。
「「………」」
気まずい雰囲気が流れる。
先に口を開いたのは麻依ちゃんだった。
「…まいが、こけちゃっただけなの」
親を守るために
見え透いた嘘を吐く5歳児。
「…そっか。痛そうだね」
その嘘を受け入れる俺。
無力な俺は何も出来やしないんだから
深く関わってはダメだ。
とりあえず叔母さんが蒸発したおかげで、今 麻依ちゃんが
暴力に晒されるという事はないんだし、
何も心配はいらない。
「ちゃんと髪、乾かして寝るんだよ」
逃げるように部屋に戻った俺は
嘘を吐いたときの麻依ちゃんの顔が
頭から離れなくて、
5歳にして親に捨てられ
日常的と思われる暴力に耐え続けてきた
小さな背中を、華奢な肩を
出きるなら守ってあげたいと思った。