きっと、いや絶対 亘にあげるつもりなのだろう。 俺は気を遣って 亘より一歩後ろに下がった。 しかし なかなか沙葉は 用件を口に出さない。 ずっと顔を赤らめて 俯いている。 あぁ…… 俺にはあんな顔しないのに。 ちょっと妬ける。 仕方ない…… 手伝ってやるか。 「亘、お前に用だとよ」 そう言って俺は 亘の肩をポンと叩いた。 一瞬だけ、 ほんの一瞬だけ 沙葉が俺を見て 笑った気がした。 まるで 「ありがとう」って 言われたようだった。