今思えば、なんで浅木なんだろうって思う。


中学の時に出逢ったけど、印象は物事をはっきり言わない、いつも隅っこにいるような女子。


顔もスタイルも、良くもなく悪くもない・・・。


本当に暗い、地味な奴だった。




自分で言うのもなんだが、俺の周りには美人が多い。それにみんな社交的で性格もいいところが多い。


俺は、相当目が肥えてると思ったし、こんな地味な女とは一生関わったりしないだろうと思っていた。






それが、中学3年生の夏で変わった。



―――――――
夏休み。俺は、杏も含め男女複数で海へ行った帰りだった。


蝉がうるさく泣いている木の下で、一人の5.6歳のガキが派手にこけた。

それも煙の出ている熱いアスファルトの上で。



「あーあ。めんどくせぇ・・・」


俺は、髪を掻きあげそのガキに向かって足を進ませた。




その時。



俺の後ろから、水色のワンピースを着た女が小走り(多分そいつ自身は必死)でガキのところへ走っていった。



その女は、熱いアスファルトにひざをついてまで、ガキの怪我の心配をしていた。


「だ、大丈夫!?・・・痛い?」


そう優しく問い掛ける声に覚えがあった。


もしかして・・・浅木理恵か?




俺の予想は的中、今にも泣きそうなガキを必死で慰めているあの〝地味キャラ〟な浅木だった。



「ママは?一人?」


「はぐ・・ッれちゃた・・・ッ」