「で、悩みは?」

颯太は、少し下を向いて話しだす。

「俺さぁ、嫌われてるかも。」

颯太の悩みっていうのは、好きな人の話なんだ。

それを、いくら幼なじみっていったって、女のあたしに話すコイツは、何?

あたしのこと、女だと思ってないんだな、きっと。

「嫌われてるって、なんで、そう思うの?」

真剣に悩みを話してくる颯太に、こっちまで真剣になってしまう。

「最近、冷たくなった気がする。あと、あんまり学校であっても話してこない。」

颯太の好きな人の話を聞くけど、あたしは颯太の好きな人を知らない。

教えてもらおうとも思わない。

「そんな毎回毎回話さないでしょ。」

「違うんだって!なんか、俺に冷たいんだよ…。」

なんで、こんなに落ち込んでるの?
…誰のために悩んでるの?

あたしは何も知らない。

「じゃあ、話しかければいいじゃん。」

そんなに話したいなら、話しかければいい。

「んー、話しかけてほしい♪」

何よ、さっきまで落ち込んでたくせに。

「その人のどこが好きなの?」

そんなに夢中になるその人は、どんな人?

『えっ!?』と、驚いて赤くなる颯太。

その人の顔を思い出したんだろう。

「えっと、…素直でかわいいところ、とか?」

“素直”?
“かわいい”?

それだけなら、たくさんいると思う。

「それだけ?」

なんで、知りたいと思ってるんだろう…。

聞きたくないのに、聞いてしまう。

素直になりたい、なんて思ってしまう。
かわいくなりたい、なんて思ってしまう。

「優しいところとか…。」

優しくなりたい、なんて思ってしまうんだ。