小さい頃のオレは、いわゆる弱虫だった。


一人っ子で、割とちやほやされながら育ったからかもしれない。



そんなオレを見兼ねていつも助けてくれたのが、羽月ちゃんだ。



『秀!また泣いてるの!?』


『ほーらっ!早く学校行くよ』


『男の子ならしゃきっとしなよ!
これ、だんじょさべつじゃなくて、男の子のまなーだから!』



年上の責任感もあってか、いつも引っ張ってくれる羽月ちゃん。



その安心感が、すごく好きだった。



だから、羽月ちゃんが引っ越すって知った時のオレは、それはもう……


いや、さすがにこれは恥ずかしくて言えない!



とにかく、そんな弱虫だった。



でも、今は少し違う。




たまたま背の高い両親を持ったから、平均より少し上くらいまで背が伸びたり


クラスメイトの勧めを断れなくて髪を茶色に染めたら、意外に評判が良かったり


サボって怒られるのが嫌で毎日真面目に練習したから、テニスが強くなったり……



引越しの時に羽月ちゃんがくれた5つの“男の子のマナー”ルールも、オレの変化を良い方向へ引っ張ってくれたのかもしれない。