「また覗き見?……それはちょっと、趣味悪いんじゃない?」


「嫌でも聞こえるんだから、仕方がないでしょ?」



そう言って、羽月ちゃんがにやっと笑った。



1つ上の3年生で、書道部の部長の宮下羽月[みやしたはづき]ちゃん。


黒くて長いまっすぐな髪は、大体いつもポニーテール。


身長はたぶん、オレより頭1コ分小さいくらいかな?



実は、元お隣りさん。



オレが10歳の時に引っ越した羽月ちゃん。


ここで再会したのは、本当にたまたまだった。



あの時も確か、こんな風に告白されてたんだっけ……――――



校舎から少し離れた場所にある、何周年だか記念のレンガの建物。


その横にある自販機をよく使うオレと、その自販機の裏にある部屋を部室にしてる羽月ちゃん。



本当に、全部が偶然。


最初は、羽月ちゃんがあまりにも大人っぽくなってて気付かなかったし。


あのルールのことなんて、もう忘れてるんだろうな……



「それにしても、ホントに変わったよねー。
すっかりイイオトコになっちゃってさ」