私の耳に、一人の男子の声が入った。

…うるさい。中耳炎になったらどうするんだ。

私は、思いっきりその男子を睨みつけた。

「お、今年は俺、根暗女とクラス離れた☆これで心置きなく高2ライフをエンジョイできるぜー!」

「いいなー!お前、俺とクラス変われ!!」

「やーだよっ…と、お♪噂をすれば根暗女がこっちを見てんぞー!!」

野次を飛ばすように、もう一人の男子が楽しそうに声をあげた。
それに気づいたのか、一緒にいた男子、今私の存在に気づいたのであろう関係ない女子なども、次々と嫌味を言ってくる。


「うわ、こっち見てんじゃねーよ!!不幸が移ったらどうするんだよー!!!」

ヤメテ……。

「こいつに近づくと、友達がいなくなるっていう不幸が訪れるんだろー?」

ヤメテ……。

「キャハハハハ!あんたたちってヒドーい!!でも不幸が来るのは嫌だから逃げろー♪」

それから、汚らわしいものを発見したような目で私を見ながら、皆が私を笑ってくる。



――ムカツク……。――




次第にそんな感情が、心に芽生え始める。

それでもイライラを抑えながら、陰口を聞こえないふりをして、逃げるように靴箱に足を運んだ。