仮病に口止め料


なぜって、彼氏のつまらないお喋りを聞くなり虹を逆さまにしたように唇を緩ませ、メイクポーチは見当たらないのにチークを塗り直し、

こんな俺に向かって彼女が嬉しそうに笑ってみせるものだから、

計算オンナに騙されたくないこちらとしたことが、情けない話だが余裕でときめいてしまう。


田上結衣、高校二年生、三月生まれ。長い髪が綺麗な色白さん。背は少し高め、声はパフェに似ている。

もう一度田上結衣、小学生時代のカンニングを武勇伝がてら自慢する近藤洋平の彼女。


俺はこの可愛いお姫様の何が好きなのか。
俺はこの可愛いお人形さんにどれだけ好かれているのか。

……ちなみに、これらは無垢な(後に痛いと自覚する前の)十代が陥りやすい自問自答であるため、

大人たちは笑ってはならないし、

該当者は己の意見を尤もらしく語らなければならない義務があるので、

俺がお花畑の国民として真っ当な思考に値する点は、何とぞ配慮していただきたい。