仮病に口止め料


けれども悲しき近藤洋平。
俺は自称・大恋愛中である身なだけで、辛うじてパートナーが小生意気な田上結衣であるだけな点を考慮すれば、

よりよき彼氏を演じる歌は唇を動かさない。


だから――……

「つかあれだ、お前男子がほっとけないか弱き乙女だからこのまんまほったかしたらやべぇよ、早退しましょ。

今すぐ職員室直行な。独裁彼氏に従いなさいね。ほら、行くぞ、乙姫さん、いざとなれば俺の胸で吐け。ほら」


――だからこうなる。
ぺらぺら零れるつまらないお喋りは、どんなに頑張っても面白くないことが必然だ。


――なのに彼女は。
――これだから彼女は。
今、世界で一番幸せ(つまり馬鹿)なのは絶対俺だと思わずにはいられない。

恋心を天使にプレゼントされる価値と、小悪魔に盗まれる意義はきっと心地良いほどに等しいはずだ。