好き同士でないと、不潔だし気持ち悪いし生理的に無理な種類の口づけをされた無知な彼女の咳の音が、
きっと俺たち二人のファンファーレなのだと思う。
「大丈夫?」
「、……びっ、いきなし何、な、……も、なに?」
優しく問いかける近藤洋平は悪魔かもしれない。
なぜなら、戸惑うお姫様の中には確実に愛の聖水が今巡っているのだと考えつつ、
見下ろして充実感を得ているのだから、意地悪な彼氏に踊らされて田上結衣は気の毒だ。
一人だけ息をあげている不敏な状況がたまらなく愛しくて、今が分かりやすい幸福に溢れた時間なのだと知った。



