仮病に口止め料


こういう場合、寝込む彼女にキスをしてとおねだりされ、

『風邪が移ったら責任とれよ』的な摩訶不思議な台詞とともに彼氏もはにかむものだとされている。

けれども残念、うちの恋人はそういう甘い雰囲気とは無縁だから、期待通りにはいかない。

それに万が一キスをしたなら、唇の熱さだっていつもと違って、馬鹿な俺は手加減を忘れたがるはずだから、迂闊に触れられない。


「キス」と、彼女がもう一度呟いた。

「――――あ、……ごめん、やだった?、よな。大変失礼いたしました」

あの時、少し嫌そうな態度をとられたことを思い出し、俺が慌ててフォローを入れたなら、

言葉を発して六秒経とうが彼女が無反応だったので、

というより、ややしかめっつらに変化したから、

先程みたいな冗談は隠して、「ごめん、気をつける」と、もう一度取り急ぎ謝罪をした。


繋いだ手はカップルらしく絡めあった形で、強い想いを強い力でこめた。