仮病に口止め料


景色の彩度をぼやかしてしまうレースカーテンの奥はまだ夜とは程遠い中、

横になる彼女の髪の毛がプリズムを浴びて輝くから、妖精みたいで綺麗だ。


「な、小話、どうよ?、ふ、面白くないなーチョイスミスか、あはは。てかあれだよ、今週の土曜だから。弟坊やの運動会、かけっこ、な、かけっこって発音可愛くない? はは、」


よーいドンとかいちについてとか、かけっこに纏わる呼び声は可愛いじゃないかと訴えた。

とりとめのないお喋りは二人の間で消えてなくなる。


相槌は要らなかった、『うん』とか『それで?』とか、

合いの手がほしい間合いで、言葉の代わりに彼女が懸命に手の平を握ってくれていたことに意味がある。

青春らしい交際が可能な恋人になってこそ分かる幸せの数は、七夕の天の川の星屑と等しいはずだ。