仮病に口止め料


風邪を引いて寝込む女の子は可愛い。
凄く可愛い。思わず抱きしめたくなるほどに可愛い。たとえるならおめかししたお人形さんくらい可愛い。

仮に『可愛い』という言葉がこの世に存在しなかったなら、

俺の心臓が輪郭から七センチ持ち上がるスキップに似た感情を、なんと表現したら良いのだろうか。

もしかすると、この恋愛がきっかけで俺が言語学者となり、『可愛い』という単語を発信する第一人者になるのかもしれない。

可愛いイコール田上結衣、これは後世に伝えなくてはならない。


――なんて、つまらないエピソードはどうでもいい。
とりあえず(風邪を引いた女子と看病する男子といった使いふるされた)念願の二人きりの甘いシチュエーションは、

予想以上に(期待するせいで)緊張してしまう。