仮病に口止め料


事実無根なのに、お姉さんときたら「うちの妹ちゃん悪阻なの? 吐き悪阻なんだ」と、厳しそうに眉を寄せるものだから俺だって焦ってしまう。

もう下手したら中学生よりアホな顔面をしている自信があった。

それでもぼんやりと役者スイッチが入れば、スポットライトを浴びた条件反射で台詞が出た。

「は? つわ?……は? ちが、ない! そんな絶対! ない、何言って。だって俺! は? どんなゆとりって思われてるんですか俺、あはは、は、……は?」


だっての次は言えない、聞いたら田上家の人は安心するのだろうが、

やっぱり俺だって色んな意味で恥ずかしいし、可愛らしい程度に見栄がある。

何か笑いに繋がるジョークを口にしようと舌を動かすも、結局言葉が浮かばずに唇を震わせるしかできない。

オシャレな彼氏を演じたいのに、ちっともスマートさがない自分が情けなくなる。