仮病に口止め料


だから俺は俺らしくメロディーを操るだけで、それに深い意味などない。


「た――結、衣ちゃん何もお昼食べてなくて。熱って吐くもんないけど大丈夫かな。つかあれですね、病院、午後診……、待ち時間。すいてたらいいですね、待つのやっぱしんどいし。やっぱ辛そう」

吃りつつ当たり障りない話をしただけで、

(ノーメイクなのに長いまつ毛に縁取られている)目を細めたお姉さんは半笑いで言った。

それはそれはいたいけな少年をからかうには最適であった。


「え、病院って産婦人科? うそー悪阻、?」

悪阻とは妊娠に見られる症状で、妊娠とは……ありえない。

だって、俺はまだ仙人修行中なのだから、産婦人科にお世話になる事柄はないと思われる。

それなのに心臓が大太鼓を鳴らしたようにびっくりして暴れるのは何故?

忙しく動くはずの唇は開いたまま全く音を発しなかった。