隣のお兄ちゃん



「…あのね、裕くん。ちょっと聞いてくれる?」


裕くんに身体を預けたまま、あたしは小さな声で言った。


胸がドクン、ドクンと波打っている。


「なに?」


頭の上から大好きな裕くんのテノールが木霊する。


「私もね、ずっとずっと前から好きだったの。…裕くんのこと」 


「えっ?ホントに?!」 


あたしの両肩をガシッと掴んだ裕くんは、背の低いあたしの顔を覗き込んだ。


目と目が合ったとき、「うん」と一度だけ頷くと、裕くんがギュッと抱き締めた。


「痛いよ、裕くん」


でも、気持ちを伝えられた嬉しさで、裕くんの制服にそのまま顔を埋めた。