「葵、ありがとうね」 「ううん。頑張ったね、由美!」 ひとまず由美の大仕事を終えたから、ホッとした。 「次は葵の番だよ!」 「…うん」 ♪キーンコンカンコン♪ 「授業だね。またあとでね」 ちょうど授業開始のチャイムが鳴り、数学の先生が教室に入ってきたところで席に着いた。 あとは、あたしだけだ――。 こんなことなら、さっき勇太先輩を呼び出したとき、どさくさに紛れて裕くんにさっさと渡しちゃえばよかった。 優柔不断な自分を恨めしく思う。