「んな訳あるかっ!」


あたしは止めてた足を動かして昇降口に向かった。


あたしが早歩きで歩いてると聖があたしの隣に来て、


「藤倉見てるとさ~、俺…すっげぇ萌えるんだけど」


小さい声で囁くようにそう言った。


あたしは無視して更に歩く速度をあげた。


聖はこの月城南高等学校の中で一番のイケメンと言う長所を持ち合わせているのと同時に超ドSと言う短所も持ち合わせている。


あたしは別にこいつをカッコいいとかは微塵も思わない。


だけどあたしの友達や周りの女子生徒は聖を見るなり黄色い声をあげる。


過去に聖を見て鼻血を出した生徒や気絶した生徒も何人かいる。


少し大袈裟だとあたしは思う。


だいたい、聖のどこが良いのかあたしには理解できない。


こいつは変態な事しか考えてない、ただの変態ドS宇宙人なのに。


昇降口についてあたしがローファ―をとろうとした時、


あたしの後ろから腕が伸びてきてそのままあたしのローファ―をとらえた。


「はい」


そう言って聖が笑顔であたしのローファ―を地面に置いた。


「…何の真似だ。誰も取れなんて言ってないぞ」


「何の真似だって何の真似でもないよ。ただ紳士な事をしただけだよ」


「……」


あたしは黙ってローファ―を履き、昇降口を出た。