「ねぇ、俺じゃ駄目なの?」


「うん。駄目」


「何で?」


「何でも」


あたしは教室を出て昇降口に向かった。


「藤倉~」


「……」


「藤倉~~」


「……」


「ふ・じ・く・ら・さ~ん」


「…うるさいな!黙って歩け!」


あたしは立ち止まって振り返り、聖(ひじり)にそう怒鳴った。


「だって…」


「…な、何…」


突然、聖がそう言いながら下を向いた。


「藤倉が無視するんだもん…」


そう言って聖はあたしに向かって上目使いをした。


「…その上目使いヤメろ。物凄く腹が立つのと同時にお前がやると気色悪い」


「嫌だな~藤倉は。藤倉も上目使いやってよ」


「出来ん」


「何で?」


「何でって…出来ないものは出来ないんだよ」


「え~、本当は俺の前でやるのが恥ずかしいからじゃないの~?」