「やっと、見付けた」


その声は碓氷だった。

私は何も言えず、黙ったままだった。



「鮎沢・・・?」



『逢いたい』と思っていたのに、何を言ったらいいのかがわからない。

否、言いたいことがたくさんあって、何を言ったらいいのかがわからないのだ。

ごめん、寂しかった、逢いたかった、・・・他にもたくさんある。


その時・・・


「!!」


クルリと回され、碓氷と向かい合わせの状態になってしまった。

私の顔は、俯いたままだ。

否、見られたくないのだ。
泣き顔を。



「ねぇ、どうして何も言わないの?顔を見せてくれないの?」

「・・・」


黙ったままでいたら・・・


“グイッ”


碓氷の手が私の顎をとらえて、そのまま上にむけられ私の顔が露わになってしまった。



「あっ、あの・・・これは・・か、花粉症で目がかゆくて涙が出てきたんだ・・・っ!!」



必死に何事もなかったように言い訳をいったが、無駄だった。



なぜなら・・・碓氷にギュッと抱きしめられたから。