王子様の溺愛カメラマン

みんな目が覚めたように一斉に身支度を始めた。



ドタバタドタバタ…!

ゴォォォ…!!



地響きのような足音

うなるドライヤー




まるで狭い家の中に特大級の嵐がきたような騒ぎだった。


時間がないながらも各々譲れないことはある。



いつもより念入りに化粧して、-1歳でも若作りしようとするオカン。


親父はなぜかスーツを選んでた。




……え?スーツ?

スーツはやり過ぎじゃねぇ?


だけど赤と金のネクタイで迷ってる親父は真剣そのものだ。


「おい親父…それはないだろ」


金と赤って…金太郎のふんどしかよ。


しかもそれ普通の会社用のスーツだし。


スーツ着るならそこはせめて礼服だろ。


しかし親父は至って真面目な顔で俺を見た。


「バカかお前。俺の人生ここでキメなくていつキメるんだよ」


「は………?」


「今日はアイツを見返す俺の晴れ舞台だからな」


「………」


いや…親父の晴れ舞台じゃね―から。




もういいや…。

親父は放っておこう。