ふぅ。

梓センパイに話しかけるのももう緊張してしまう。

話はじめた頃に時間が巻き戻ったようだ。



「梓センパイ」


突然呼び掛ける俺の声にびくついたように見えた梓センパイの身体。


少し間をおいて話しかける。


「梓センパイ、久しぶりですね。」


俺がそう言うと

「うん、久しぶりだね。」

と梓センパイから返ってきた。



梓センパイの声が聞けた。

梓センパイと会話ができた。


ただそれだけのことなのに、すごくうれしかった。


「中庭で1人ってどうしたんですか?ちゃんとご飯食べました?」


「ちょっと用事があってここにきたから、ご飯はまだなの。」


用事…告白か…



「ちゃんと食べないとダメですよ!」


沈む心にムチを打ち、元気に言う俺。


平静を装えてただろうか。




キーンコーンカーンコーン


あと10分で5時間目が始まる。


早く、怖がらないで早く聞かないと…っ。


「梓センパイ最近ずっと俺のこと避けてましたよね?俺…なんかしました?」


上手い言い回しができず、直球で聞いてしまった。