父さんはな、その時一度死にかけてなぁ、命は助かったが背中の火傷はどうにもならんかった。


その火傷の為に父さんはかなり苛められたし、辛い思いをした。


お前の母さんと結婚する時も向うの親御さんに大反対されたんや。


しかし、お前の母さんは強かった。


自分の親を敵に廻しても結婚したいと頑張り、漸く結婚したんや。


お前の母さんが弾くピアノのお蔭で、父さんの気持ちはかなり救われたし、お前自身覚えてないやろうが、父さんや母さんがお前の事を大事に育ててきたんやで。


小さい時、体の弱かったお前を抱いて病院まで走っていって、寝ている医者をたたき起こしてまで見てもらったり、仕事で忙しい中昼休みだけ家に帰って来て、お前を抱いて笑顔を見てからまた仕事に行ったり、何時もお前を見ていたわしにはよう判るんや。


しかし、お前はこの年になって家に近寄らず、遊びまわって、毎日母さんが泣いているの見た事ないやろ?』


『・・・・・・・・・・・』


『わしのせいで、わしのせいでお前の父さんは行きたい大学にも行けなかったし、でも、父さんは、お前には大学に行かしてやりたいと大学の費用を出す為に一生懸命働いて、そんな事知らずにお前は文句ばっかり言って、お前の父さんは一度も文句一つ言わずに頑張ってきたんや!


お願いやから、もう少し父さんや母さんの気持ちを判ってあげてくれないか?』