ひとりぼっちの君へ

聞いていない。年上なんて聞いてない。
てっきり年下か、同い年ぐらいだと思っていたのに。まさかの年上。っても1つ上だけど。
どうしよう。部活も何も入っていなかった俺は年上との接し方をあまり知らない。


「そっかー受験生か、4年制の大学受けるの?じゃあ、いい参考書教えてあげる」


自分の後輩だと解ったからか、彼女はさっきより随分肩の力が抜けた感じで、にこにこと笑う。


「うんとね、数Ⅲだったらこの辺のとか人気で、」


台に上って上から2段目の本を彼女は抜き取って俺に渡した。台に上った視線は丁度、俺と同じぐらいになって、ぱちり、間近で合った瞳に俺は固まってしまった。


「ん?」

「あ、いや、ありがとうございます」


なんて、中学生みたいな恋してんだ俺。

耐えきれなくなったのか、それでもなんとか控えめに笑う西村の声が後ろで聞こえた。
渡された参考書はずしりと重い。



「あの、名前なんていうんですかー?」



唐突に落とされたその言葉は、俺の背中から心を突き刺して、そのまま彼女へ届く。
俺は焦ったように、その発言者の西村を振り返った。ら、してやったりっていう顔。


「ちょっ、」
「俺、西村っていいます。こいつ、松本、の友達で」


話始めた西村は、止まらない。部活をやっているから、年上の人とのコミュニケーションには慣れているのか。というかそうだ、西村は最初から人懐っこいやつだった。

と、俺が頭の中であれこれ考えているうちに会話は進んで行く。


「俺らこれから受験生で、また参考書とかも必要になるし…またいろいろ教えてほしいんで」


軽い、軽すぎるよ西村。はらはらしながら俺は二人の会話を聞いて、口を挟む隙もない。

そして、まだ名前も知らなかった彼女は、同じ高さの目線で微笑むと口を開いた


「藤川です。藤川咲枝。」


よろしくねー。と首を傾げると、俺の手の平に参考書をもう一冊、ずしり、と置いた。