不機嫌でかつスイートなカラダ

「今までありがとう。今日で最後にしよ、あたし達」


「え……?」


俯いていた卓巳君は、パッと顔を上げる。


「なんで? オレの……せい……だよな?」


「ううん。違うよ」


あたしは首を横に振る。


「今日会う前から決めてたの。サヨナラしようって。あたしが勝手にそう決めてたの」


「萌香チャン……あのさ……オレ…」


その時、二人の間を引き裂くように卓巳君のケータイ音が鳴り響いた。

あたしにはそれがゲームオーバーを告げるホイッスルのように聞こえた。

もうロスタイムも終了だ。


「卓巳君、早く行かなきゃいけないんでしょ?」


和美さんの元に……。


「じゃ、あたしこれで……」


「ちょ……待てって」


背を向けて立ち去ろうとするあたしの手首を卓巳君が掴む。


「……放して?」


もう、我慢できなかった。

ポロポロと涙が零れる。


「もうヤダよ……。卓巳君の傍にいるのが辛いよ……。もう会わない。ここにも来ない。だから連絡してこないで」


どのぐらいそうしていたんだろう。

相変わらず鳴り続ける携帯音。

卓巳君はしばらくずっとあたしの手首を掴んだままだった。


だけどふいにその力が弱まって……あたしの手首は解放された。


「わかった……」