不機嫌でかつスイートなカラダ

立ち止まって振り返ると、すぐに卓巳君が追いついてきた。


「卓巳君……」


なんで?

なんで追いかけてきてくれたの?



「忘れ物」


そう言って差し出す手には、ジンジャーマンクッキーの入った紙袋があった。

卓巳君と一緒に食べようと思っていたクッキー。

結局一口も食べてあげられないまま、割れちゃった。


「ありがと……」


あたしは手を伸ばしてそれを受け取った。

卓巳君は袋を渡しても、なぜかその場から動き出そうとしない。


「……あのさ……やっぱ……行くの?」


「え?」


「いや……なんでもねぇ」


卓巳君は下を向いて、あたしから目をそらして、ポリポリと首の後ろを掻いている。


「なんか、ごめんな? オレ……」


「え?」


「今日オレなんかおかしかったつうか……。強引にあんなことして……ほんとごめん」


「ううん……大丈夫。気にしないで」


あたしは首を横に振った。

そしてじっと卓巳君の顔を見上げる。

今言わなきゃ……。

ちゃんと言わなきゃ。


「卓巳君……」