不機嫌でかつスイートなカラダ

重い足を引きずりながらトボトボと歩く。

卓巳君のマンションがどんどん遠ざかっていく。

この道を歩くのも、きっとこれが最後。


そう言えば、卓巳君のマンションから一人で帰るのは初めてかもしれない。

卓巳君てばああ見えて心配性なんだよね。

いつも、どんなに疲れてても必ず送ってくれた。

駅までたった5分の道のりなのに……。


最後だったのに……。

結局言いたかった事、伝えたかった事は何一つ言えなかった。


はぁ……。

涙が零れそうになって、目尻をそっと拭った。

誰にも顔を見られたくなくて、唇をキュッと結んで俯いて歩く。


すると背後から足音が聞こえてきた。

その音に混じって、あたしの名前を呼ぶ声も……。





「萌香チャン!」