不機嫌でかつスイートなカラダ

卓巳君からの唐突な質問に、あたしはキョトンと彼を見上げることしかできない。


「オレ……ずっと考えてたんだ。バラの花にはなんでトゲがあるんだろうって。それはさ……やっぱバラが綺麗すぎるからなんだよね。魅力的な花を咲かせて、甘い香りで誘ってさ……。そんなん誰だって欲しくなるだろ? だからバラは自分の身を守るためにトゲをつけたんだ」


「卓巳君……?」


「けどさ。そんなトゲ……結局何の役にも立たないって思わない? 武器を身に纏ったらさ、こっちは何とかして手に入れたいって余計闘争心が湧くっつかさ。どういうことかわかる……?」


卓巳君はあたしの首筋に唇を這わしながら話続ける。


「つまり……」


その熱い唇に反応して体がビクンと撥ねる。


「抵抗されたら、余計欲しくなるってこと」


熱い息がかかる……。


「……や………」


喉の奥が痛くて、振り絞った声は消え入りそうだった。

きっと彼の耳には届いていない。


涙が零れそうになって、あたしは顔を横に向けた。


床に転がった紙袋から、ジンジャーマンクッキーがはみ出していた。

落とした衝撃で割れてしまったジンジャーマンが、悲しそうにこちらを見ている気がした。


クッキー食べたかったな。

マグカップ抱えてコーヒー飲みながら、初めて合コンで会った時のこととか話すんだ。

あたしね、卓巳君に聞きたいことが、いっぱいあったの。


『初めてあたしを見たときの第一印象覚えてる?』

『あの時、どうしてホテルに連れていったの?』

『もう一度会ってくれたのはどうして?』



――あたしのこと……


ほんの少しでも……


一瞬でも……


“好き”って思えたことあった?