なんて言いながら、おじさんが手に持っていた鐘をカランカランと鳴らす。


「え？　４等？」


何がもらえるのかと期待したあたしの手に渡されたのは、見覚えのある小さな箱。


「アポロチョコ……」


その苺模様のパッケージを見て、思わず呟いてしまった。


「うん。４等はチョコね。おめでとう」


相変わらずニコニコ笑うおじさんにつられて、あたしもプッと吹き出してしまった。


「４等がアポロチョコかぁ……。もうちょっと良い物もらえると思ったんだけどなぁ……」


なんて言いながら、クスクスと笑いがこみ上げてくる。


そう言えば、卓巳君の研究室でこれを食べたんだっけ。

あの時はビックリしちゃった。

卓巳君たら、あたしの口の中のチョコ、全部持ってっちゃうし。


考えてみたら卓巳君と出会って、まだ一ヶ月も経っていない。

あたし達はまともなデートもしたことない。


それでも、卓巳君との思い出があちこちにあるんだ。


油断するとほらっ……こんな風に卓巳君を連想させるものに出会っちゃうんだ。


卓巳君……。

あたし大丈夫かな？


今日で最後にして大丈夫なのかな？


きっとこんな風に、ちょっとしたことですぐにアナタのこと思い出しちゃうね。


あたしはもらったアポロチョコをコートのポケットにそっとしまい込んだ。

まるで宝物のように。


卓巳君との一つ一つの思い出を大事に……大事にしよう。


そう思いながら。