どうしよう。

何も考えずにお店に入ったものの、買わないわけにはいかないよね。


でも、クリスマスケーキはダメだ。

きっと卓巳君は今夜、和美さんと食べるんだもん。


あたしは……。


ふとショーケースの上の籠に目が留まった。

そこには、人の形をしたクッキーが袋に入れられて置かれていた。

一つ一つ手作りのため、その表情も少しずつ違っていて、ユーモラスで見ているだけでホッと和んじゃう。


「可愛い……」


ポツリと呟くと店員さんが説明してくれた。


「ジンジャーマンクッキーです。海外ではクリスマスツリーのオーナメントとして使われるんですけどね。名前の通り、スパイスの効いたクッキーなんですよ」


「じゃあ……これください」


あたしは一袋手にとって、店員さんに渡した。


これにしよう。

あたし達にはこれがいい。

ケーキとシャンパンじゃなくて……。

クッキーと……それから、卓巳君のために温かいコーヒーを淹れてあげよう。



今日、あたしの中にはもう一つ決めていたことがあった。


それは、今日はエッチをしないこと。

最後ぐらいはエッチなしでちゃんと話がしたい。


体から始まったあたし達の関係。

最後もエッチして終わり……なんて虚しすぎるもん。

このクッキーを食べながら二人で過ごすんだ。


あたしとの時間がどれぐらいあるのかわからないけど、今まで言いたかったこと、聞きたかった事、全部話そう。


そして、あたしの想い、ちゃんと伝えたい……。


どうか彼に……伝わりますように。