「ここ座っていい?」


あたし達が返事をする前に、優一君は沙耶の隣のイスに腰掛けた。

その流れで自然とあたしの隣に座る卓巳君。


「なになに~? 何の話してた?」


優一君がテーブルに身を乗り出してあたし達に尋ねる。


だけど、沙耶は頬杖ついてそっぽを向いたまま「別に……」と答えるだけだった。



「うわっ。テンション低っ」


優一君はなんとかこの場の空気を変えようとしているのか、わざとおどけて言っている。


でも確かに、なんだかこのムードはいたたまれない……。


あたしはとりあえず話題を探そうと、隣にいる卓巳君に声をかける。


「今日は、早い時間に終わったんだね」

今は夕方の5時頃。

こんな時間に卓巳君に会えるのはめずらしいことだ。


「んー……」


卓巳君はいかにも眠そうに目をこすっている。


代わりに答えてくれたのは、優一君だった。


「違う違う、こいつ昨日から研究室に泊まり込んでて、今、徹夜あけでようやく出てきたところ。飯食ったらまた戻るんだってさ」


ええっ。

……ということは、かれこれ何時間眠っていないんだろう。

卓巳君の体が心配だよ。


優一君はクックッと肩を揺らしながら言葉を続けた。


「卓巳は王子様だから、クリスマス、忙しいんだよねぇ……。んで今頃、焦ってんだよなぁ。つか、お前、エンジンかかるの遅すぎだって」


「うっせ。お前……余計なこと言ってんじゃねぇよ」


――ドカッ

テーブルの下で、優一君の足を卓巳君が蹴飛ばしたような音がした。


「いてぇ……」


優一君は顔をしかめて痛そうな表情をしている。


「王子様……?」