「あたし、二番目で良いなんて……悲劇のヒロインになりきって言ってたけど。それって間違ってたのかな」


「萌香……」


「あたし、自分のことしか考えてなかった。自分だけが傷ついてる気になってた……」

そう。

あたしは今の今まで、和美さんの立場になって考えたことが一度もなかったんだ。



信号はとっくに青に変わってた。

通り過ぎる人があたし達をチラチラ見ていく。


「あんな良い人なんだよぉ……」


でも、あたしの涙は止まらなかった。


「あんな良い人を傷つけちゃダメだよぉ……」


沙耶は何も言わず、ポンポンとあたしの肩を撫でてくれた。


このままじゃダメだ……。

こんな関係はやっぱりダメなんだ。


怖がってばかりじゃダメだ。


勇気を持たなきゃ。


ちゃんと決断しなきゃ……。


握りしめた100円玉はまだ温かくて……。

和美さんの手の温もり、そのもののような気がした。


ごめんなさい……。


誰にも聞こえないような声であたしは呟いた。