「……で。結局イブは昼間だけ会うんだ……?」


沙耶が呆れ顔であたしを見る。

そして、ため息をつきながら「あたしとおんなじじゃない……」と呟いていた。


「……うん」


あたしは目の前にある男物の手袋を手にとって眺めていた。

今あたし達はメンズのセレクトショップに来ている。

あたしは、卓巳君とのいきさつを沙耶に報告した。


「ったく、関口卓巳は何考えてんだ……」


沙耶は相変わらず怒り口調でブツブツ言ってる。


「萌香もだよ……。ほんとにそんなんでいいの? 彼女に会うまでの繋ぎにされてんだよ?」


「うん……。あたし、二番目の女でもいいんだ。それでも会いたいんだもん」


「あのさぁ……意味わかってんの?」


あたしの言動に相当イライラしたのか、沙耶はついにあたしの手から手袋を奪い取った。


「沙耶……。ごめんね……心配かけて……」


「別に謝らなくてもいいけど……」


沙耶はフッと表情を緩めると、あたしに手袋を返してくれた。

そして、そっぽを向いてわざとぶっきらぼうに呟く。


「あたしはさ……。萌香には幸せな恋して欲しいんだ。あたしと同じような気持ちを味わって欲しくない……。それだけだよ……」


「うん……ありがと」


沙耶の気持ちが痛いほど伝わってくる。

あたしも沙耶も抜け出せない迷路に迷い込んでしまった。

ううん。

ほんとは抜け出せる。

出口がどこかもわかってる。

だけど、あえてわからないふりしてるんだ。