あたしの答えを聞く前に動き出す卓巳君の体。

卓巳君は着ていたTシャツを脱ぎ捨てて、布団の中に入ってきた。


「卓巳君……」


何も身に纏っていなかったあたしの体は卓巳君が触れた場所からまた熱を帯び始める。


「大丈夫? 辛くない?」


卓巳君はあたしの体調を気遣ってくれているのか、心配そうにあたしの顔を窺っている。


「うん。平気。でも……手握ってて……?」


さっきの夢のせいかな、まだ胸の奥に残る不安感。

涙腺も緩んでうるうるしちゃう。


卓巳君は「フッ……」と笑みを浮かべると、指を絡ませるようにして、あたしの手を握り締めた。


そしてじわりと……優しく……あたしの中に身を沈める。


押し殺したような悲鳴が口から漏れる……。

さらに熱くなった体はもう溶けてしまうんじゃないかと錯覚するほどだった。


ううん。

いっそ溶けてしまいたい。


トロトロに溶けて……

卓巳君の体の一部になってしまいたい。


――このままずっとこうしていたい……。


潤んだ瞳で見上げると、ちょっと苦しそうに顔をゆがめている卓巳君と目が合った。


「……んな目で見んな……」


卓巳君はあたしから目をそらすと、ギュと強く抱きしめる。

そして耳を甘く噛んだ。


――もうダメ。

気が遠くなりそう……。


ぼんやりとする意識の中で卓巳君のかすれた声が聞こえた。


「オレ……最低だな……」


その言葉の意味は、あたしにはわからなかった。


だけど最低なのはきっと……あたしだ。

二番目で良いなんてウソ。


ホントは卓巳君の彼女の座を狙っているのかもしれない。


こうして体を重ねて繋がっていれば、いつかあたしの方を見てくれる。


いつか和美さんと別れて、あたしを選んでくれるんじゃないか……なんて心のどこかでそんなこと考えてるんだ。


さっきみた夢に出てきた真っ黒な海。

あれはきっとあたしの心。

どんどん汚れて黒くなっていくあたしの感情。

もしも体の中にあるそんなものを見られたら、きっと嫌われちゃうね……。


最低なのはあたしなの。