「大丈夫? 怖い夢でもみてた? なんかうなされてたみたいだけど……」


卓巳君が心配そうにあたしの顔を覗き込んでいた。

夢の中で手を掴んでくれたのは卓巳君だったんだね……。

あたしは卓巳君に握り締められている右手をそっと見た。



「……涙出てるし。子供みてぇ……」


卓巳君はクスクス笑いながら、あたしの目尻を指で拭ってくれた。


「あたしずっと眠ってたの?」


「いや、5分ぐらいだよ。けど、マジびびった。風呂ん中で貧血起こすんだもん」


「ごめんね……。卓巳君がここまで運んでくれたんだ」


あたしは卓巳君のベッドに寝かされていた。

卓巳君はベッドの端に腰をかけてあたしの顔を覗き込んでいた。


「気にすんなよ。まぁ……途中までしかできなかったのが残念だったけど」


おどけて言う卓巳君。



「途中……?」


言いながら思い出した。

そっか、さっきあたし達お風呂の中で……。


「ごめんなさい……」


そんなこと言われて、突然恥ずかしくなったあたしは、布団を引き寄せて顔を半分ぐらい隠した。

だけど卓巳君は悪戯ッ子みたいに目をキラキラさせて、その布団をわざと引っ張ってあたしの顔を覗き込む。


「ぷっ……顔真っ赤。まだのぼせてんの?」


卓巳君はクスクス笑いながらあたしの頬を指ですーっと撫でる。


「具合、どう?」


「うーん……。まだ頭がぼんやりしてて……」


言葉の途中で、卓巳君の指があたしの唇に触れた。

卓巳君はいつものように優しい瞳であたしを見つめる。


そしてその顔がだんだん近づく。


まるであたしの体をいたわるかのように、いつも以上に優しいキス。


唇から頬……そして目尻に……。


やがて耳元まできた卓巳君の唇が甘く囁く。




「オレも布団入っていい?」



「え?」