あたしが落ちたところは、真っ黒な水が張っていた。

プール?

ううん、もっと広くてもっと深くて……。

先がどこまであるのかもわからないぐらい、広い海のようなところ。


あたしは、泳ぐ気も助かる気もなくて、ただ水の流れと重力に身を任せた。

あたしの体はまるで誰かに引きずられるように水中に沈んで行く。


息ができなくてだんだん苦しくなる。

真っ暗で、今自分が目を開けているのか閉じているのかすらわからない。


助けて……。


助けてよ、卓巳君。


苦しい。


あたしをここから救って……。


必死でもがいて手を伸ばしたら、誰かがあたしの手を掴んでくれた……。


――……
―――――




「……チャンッ……萌香チャン!」


あたしの大好きな声が響く。


あたしはゆっくりと瞼を開けた。



「……卓巳君」