卓巳君はあたしから目をそらして、ほんの少し困ったような表情をしている。

静かなバスルーム。

この沈黙が永遠に続くんじゃないか……そんな風に感じた時。


――ピチャン

水音が響いて、卓巳君の体が動いた。


そして一言。




「ごめん……」



――ああ、やっぱり。

90パーセントぐらいわかりきっていたことなのに、目の前で改めてそう言われて、想像以上のダメージを受けた。


心臓がキリキリと痛む……。


「イブは予定入ってるんだ」


「あはっ……。そっか、だよね。あたしいつも急すぎるよね……ごめんね」


あたしは意味もなく髪を触りながら話し続けた。

もうまともに卓巳君の顔を見ることもできない。

それでも、傷ついてる……なんて気づかれたくなかった。


「イブに暇してるなんて、あたしぐらいのもんかぁ……。ほんと、あたし、ダサいよね……あはは」


「萌香チャン……」


「あ、いいのいいの。気にしないでね。友達とどっか遊びに行っちゃおうかなっ……」


「萌香チャン、なんで泣くの?」


「え……」