――なんだ。
あたしは空を見上げてハァと白い息を吐いた。
涙が零れそうだったから、上を見なきゃって……そう思ったんだ。
和美さんはあたしとは正反対のタイプの女の子。
艶のあるサラサラの黒髪にナチュラルなメイクと服装が彼女の雰囲気に似合っている。
シンプルだけどヤボったいという感じじゃなくて……
まさに“可憐”とか“清楚”って言葉がピッタリだと思う。
小柄で華奢で可愛くて、男だったら……ううん、女のあたしから見ても守ってあげたくなるようなタイプだ。
派手だとか、軽そうに見られるあたしとは大違いだ。
『本命にしたいタイプはどっち?』
――なんてアンケート調査をしたら、きっと男の子は全員彼女を選ぶんじゃないかな。
やっぱ和美さんが本命の彼女で……あたしとのことは体だけの遊びだったのかな。
「萌香? 大丈夫?」
沙耶が心配そうにあたしを覗き込んでいた。
「ああ。うん……平気。多分……あの人、卓巳君の彼女さんだと思う……」
あたしは咄嗟に笑顔を作った。
口の端がひきつっているのは自分でもわかっていたけど……。
「あはは。すごい偶然だよね。こんなとこで見ちゃうなんてさ。あたしってタイミング悪すぎっ。あの人……めちゃくちゃ可愛いよねっ。やっぱああいう子が本命の彼女になるんだね……ハハ」
「もぉ、なんで平気なフリすんのよ?」
沙耶は怒っているのか、呆れているのかわからないような複雑な表情であたしをじっと見つめる。
「ムカつくっ。一言文句言ってやるっ」
二人のいるお店に向かって足を進めようとした沙耶を、あたしは慌ててコートの端をひっぱって止めた。
「やめてっ」

