不機嫌でかつスイートなカラダ

「萌香は初めてできた彼氏の存在がうれしかっただけなんじゃないかな? 好きだ、付き合って……って言ってもらえて、なんとなくつきあって……。でもそれに浮かれてて、自分も好きだって思い込んでたんじゃない?」


沙耶の言葉を噛み締める。

だけど自分のことなのによくわからなかった。


「一度誰かと付き合っちゃうとさ。今度は一人になるのが怖いんだよね。おかしいよね。付き合う前まではさ、ずっと一人だったはずなのに……。萌香は一人になるのが怖くて、智也にしがみついていただけじゃないかな? 本気で好きなわけじゃなかったんじゃないの?」


沙耶の言葉が胸に突き刺さる。

たしかにあたしは智也に振られて一人になるのが怖かった。

だから捨てられないように……っていつも頑張ってた。

ほんとうに彼のことを愛してたわけじゃなかったのかな……。


「体ってさ、正直なんだよ。確かに、相性とかさ、上手い下手……みたいなもんもあるかもしれないけどさ。まずは愛情だとあたしは思うよ?」


「……」


「萌香が関口卓巳に抱かれて気持ち良かったのは、そこに愛情があったからだよ。萌香は最初から彼を好きだったんだよ。初めて会った時からずっと……」


「沙耶ぁ……」


「だから、勇気だしてみ?」


沙耶はハンカチを取り出してあたしに差し出す。


「自分の気持ち、ちゃんと彼に伝えなきゃ。何も始まらないんだよ?」



「ん……」


あたしはコクコクと頷いた。

沙耶に借りたハンカチはみるみるうちにあたしの涙で湿っていく。