沙耶ももらい泣きしそうになっているのか、その目は真っ赤に充血していた。


「簡単に寝たわけじゃないでしょ? 萌香はさ……気づいてなかったのかもしれないけど。最初から好きだったんだよ、関口卓巳のこと」


「え……?」


「萌香はその場の勢いだけで寝ちゃうような子じゃないよ。それはあたしもよく知ってる。初めて会った時から惹かれてたんだよ、彼に……違う?」


出会いはあの合コン。

エッチが嫌いだと言ったあたしの腕を掴んで立ち上がらせた卓巳君。


あの時の腕の感触も彼の甘い香りも……今でも強烈に印象に残っている。

卓巳君は別に無理やりホテルに連れ込もうとしたわけじゃない。

今考えてみれば、いくらでも腕を振り解いて逃げ出すことはできた。

だけどあたしは彼についていったの、自分の意思で。


あの時からあたしは卓巳君に恋してたのかな……。


「こういっちゃぁ……なんだけどさ」


沙耶はまだ話を続けた。


「智也と付き合ってる時の萌香はあんまり幸せそうじゃなかったよ?」


「え……?」


「智也はさ、あんまり萌香を大事にしてなかったじゃん? それでも萌香は健気につくしているように見えてたけどさ……」


「うん……」


「でも、あたしから見れば、萌香もほんとに好きなのかな?……って思ってた」


どういうこと……?

沙耶の言っている意味がわからなくてあたしは眉をしかめた。


「好きだったよ? 智也のこと……」


「うん……。そうなんだけど……なんていうか……」


言いにくそうに口ごもる沙耶。


「いいよ? はっきり言ってくれても?」



沙耶はすうっと息を吐いてから、あたしの顔をじっと覗き込んだ。


「じゃ……正直に言うね」