「ごめんな。送ってあげられなくて……」


卓巳君があたしの首にマフラーをぐるぐると巻いてくれた。


「ううん。いいの。研究頑張ってね」


あたしは首にかかったマフラーをギュッと握り締めて顔を沈める。

ほんのりと卓巳君の香りがして、あったかい。


「ありがとう。マフラー借りちゃっていいの?」


「ああ。ほんとは手袋も貸してやりたいんだけど、落としちゃって今持ってないんだ」


「新しいの買わないの?」


「買いに行く暇ねぇし。卒研終わったら探しにいくよ」


「そか……」


「気ぃつけて帰れよ」


卓巳君はにっこり微笑むとポンポンとあたしの頭を撫でた。


「おいしかったよ。ごちそーさま」


「あ……。うん、また今度何か作るよ。迷惑でなければ……だけど」


「あー……。そっちね。そっちも美味かったけど……」


卓巳君はあたしの腕を掴んでスッと引き寄せた。


そして耳元で囁く。


「萌香チャンも……おいしかった。ごちそうさん」


耳に熱い息がかかる。

思わず耳を押さえて真っ赤になっているあたしの様子に、卓巳君は楽しそうに笑ってた。