彼女達が部屋を出て行く時、入り口に立っているあたしとすれ違った。

チラチラとこちらを見る痛いぐらいの視線を感じる。

目が合ったあたしはとりあえずペコリと頭を下げた。


彼女達が通り過ぎた後、甘い香水の残り香とともに、背後からクスクスと笑い声が聞こえた。


「クスッ……あの子が……」
「……萌香ちゃんだってさ……」
「……ああ……例の……クスクス」



何よ、何よ、何よ……。

なんか感じ悪い……。

あたしはもうこの場にいづらくて、泣きそうになってきた。




「とりあえず、ちゃんと中、入んなよ」


いつの間にか近くに来ていた卓巳君があたしの背後のドアをパタンと閉めた。



「あのっ……急にごめんね」


「いや、来てくれてうれしいよ」


卓巳君はニッコリ微笑むと、あたしの肩に手を回して部屋の奥へと誘導した。

不覚にもそんな動作にまたドキドキしてしまうあたし。


「オレも会いたかったし。以心伝心……みたいな?」


――ウソばっかり。

さっきまで女の子に囲まれてあんなに楽しそうだったじゃない。

あたしのことなんてこれっぽっちも考えてないクセに。


――ああ、やだ。

これってヤキモチ?


あたしは「はぁ……」と小さくため息をついた。