「じゃ、うちらもそろそろ帰りますか」
女の子のうちの一人の声にほんの少しホッとした。
多分卓巳君と同い年であろう彼女達は、あたしより二つ年上なだけなのに、なんだか随分大人っぽく見えた。
「おぅ。気ぃつけろよ-」
そんな優しい言葉をかける卓巳君の声に、胸がチクリと痛んだ。
卓巳君はきっと誰にでも優しいんだよね。
「あ……そだ」
一人の女の子が、帰ろうとした足を止めて、卓巳君の方へ振り返った。
「あたし、これ……和美(カズミ)から預かってきたんだった」
そう言って紙袋を卓巳君に差し出す。
「関口、この前……これ和美の部屋に忘れたでしょ? 『ちゃんと洗濯してアイロンかけといたから』……って言ってたよ?」
卓巳君は紙袋を覗き込むと「おおっ。サンキュ」とちょっと恥ずかしそうに苦笑いしていた。
和美さん?
――って誰?
二人の会話の様子から、紙袋の中身は洋服なのだと想像できた。
そして服を和美さんの部屋に置いていくような……卓巳君と和美さんはそんな関係なんだろうか。
考えたくないけど……ひょっとして
本命の彼女……?