「いや、マジだって。オレの舌のテクニック、ハンパねぇし。なんなら試してみよっか? オレマジで上手いっつの」
卓巳君の声だ……。
「もぉ、関口サイテー。あんた、エロすぎっ」
そしてまた女の子の笑い声が響いていた。
何なの?
――舌のテクニック?
――試す?
――上手い?
――エロい?
「おーい。卓巳―。お届けもーん!」
優一君があたしの肩を持って、部屋の中に入れる。
その声に反応して、椅子をクルリと回して、卓巳君がこちらへ振り返った。
卓巳君は部屋の一番奥の席に座っていて、その周りを取り囲むように女の子が3人立っていた。
「萌香チャン! え……何で?」
卓巳君はあたしの顔を見るなり、一瞬ひどく驚いたような表情を見せた。
そりゃそうか。
あたしが大学にやってくるなんて想像もできないことだもんね。
「あのっ……こんばんは」
どう答えていいかわからずとりあえずペコリと頭を下げた。
「じゃ、オレは自分の部屋もどるし」
優一君はポンッとあたしの肩を叩いてそのまま去って行ってしまった。
ううっ。
優一君、まだ行かないでほしかったな……。
部屋に残されたのは、卓巳君とあたしと……それから見知らぬ女の子が3人。
どう考えても部外者はあたし一人なわけで……
なんともいたたまれないこの場の雰囲気にあたしはひどく緊張してきた。
どうしよ……。
早く渡して帰らなきゃ。
でもこの状況で、差し入れを出す勇気なんてないよ。
あたしは紙袋の取っ手をキュッと握り込んだ。