ひと通り話しを聞いた後、またまた目の前の男の子が発言した。

ううっ……


それを言わないで欲しい。

本当は薄々感じてた。

そうじゃないかな…って。


そしてついに、1ヶ月前に同じことを彼氏から言われたのだ。


さらにそのことが原因であたしはフラれた。




「も……いいの! あたしエッチなんて一生しなくても平気だもん」


あ……。

言ってて泣きそう……。


ヤケになってグラスを手に持つと、底に残ったビールを一気に飲み干した。



どうしてあたしはいつもこうなんだろう……。

誰もが簡単にやってることが自分だけ苦手だったりするのだ。



基本的に何をやっても鈍クサい。


何もないところでつまづいたり、

自動で動く回転ドアに入るタイミングがわからなくてオロオロしたり、

出席日数を何度も確認したはずの授業の単位は、なぜか落とすし……。


要領が悪いっていうか……みんなが当たり前にこなしていることがあたしにはとても難しいのだ。



「エッチ……って、難しいよ……」


しょんぼりするあたしの言葉に、一瞬キョトンとしたみんなは、また一斉にゲラゲラと笑い出した。



くそぉ……みんなしてバカにして。



――カチッ


その時、すぐそばでライターの蓋をあける音がした。


見ると、隣に座っている男の子がカチカチと蓋を開けたり閉じたりしていた。


「それってさ……」


彼はカチカチさせていた手を止め、タバコに火をつける。

そして口からふぅと煙を吐き出すとあたしの顔を覗き込んできた。


「単に男がヘタなんじゃねーの?」